住民票って住んでるところにあるのが当たり前というイメージですが、住民票のあるところに住んでいない場合どうなってしまうんだろう。
少しのあいだ別の場所で生活するだけでも住所を異動しないとダメなのか、逆に住民票を異動しなくても良いのはどんな場合なのかわかりませんよね。
住民登録は居住実態で判断するので、実態がないと住民票が職権消除されることもあるんです。
ここでは、住んでいないところに住民票を置くことについての是非や職権消除について元担当者が解説していきます。

住んでいないところに住民票を置くのは原則NG
住民登録は、住基法という法律で規定されていますが、「住民に関する記録の適正な管理を図るため、住民に関する記録を正確かつ統一的に行う」ことを目的にしています。
適性管理のためには、本来、実際に住んでいるところに住所を登録するのが大原則になります。
しかし、生活実態に合った情報を記録する必要があるわけですが、その実態の判断というところがポイントになってきます。
市区町村長には「正確な記録」を、住民には「正確な届出」を要請しています。(住基法第3条)

実態のない住所には罰則もある
先ほどお伝えした、住民の正確な届出というのは、「転入」「転居」「転出」や「世帯合併」「世帯分離」などを指します。
そして、これらは届出ですから、居住実態いついて住民から役所に伝えなければなりません。
もし、虚偽の届出をした場合は、罰則規定があります。
住基法第52条
第五十二条 第二十二条から第二十四条まで、第二十五条又は第三十条の四十六から第三十条の四十八までの規定による届出に関し虚偽の届出(第二十八条から第三十条までの規定による付記を含む。)をした者は、他の法令の規定により刑を科すべき場合を除き、五万円以下の過料に処する。
第○条などと書かれていてややこしいですが、中身は転入や転居などの届出のことで、虚偽の届出をすると過料に処されてしまうという内容です。
転入や転居は住所を移してから14日以内にしなければなりませんが、これを過ぎた場合もこれに該当します。

虚偽の届出があったことは、市区町村役場から家庭裁判所に連絡を入れる運用になっています。
転々とホテル暮らしをされているアドレスホッパーの方の住所でも消除される可能性があります。
詳しくは「ホテルに住民票は置けるのか解説」を参照してください。
考えられる住所を移さない理由
とはいえ、住民票を移すと都合が悪いということがあるのも事実です。
よく質問にあがってくる例としては次のようなものがあります。
- 単身赴任中
- 大学など修学中
- 長期の海外出張
- 長期入院中
- 住宅ローンのため
- 離婚協議中の夫婦
上記は、住んでいないところに住民票を置いても良い例ではなく、あくまでも疑問として出てくるケースです。
問題がないケースと問題のあるケースがあります。
ひとつずつみていきましょう。
休日を家族と過ごすという単身赴任の場合はOK
よく、短い期間なら住民票を移さなくても良いと書かれているサイトがありますが、それは出張であり間違いです。
本人の日常生活や家族との連絡状況をみて判断しますが、難しい場合は土日や休日など勤務日以外を家族のもとで過ごしているならば、単身赴任者の住所は家族の居住地にあることになります(昭和46年 自治省行政局振興課長通知)

大学や専門学校などの場合は原則として下宿先が住所
これも、将来的に実家に戻ると決めている場合は、実家に住所を置いてよいと書いているサイトがありますが、まったくの間違いです。
そもそも市区町村役場で将来的なことを判断することはできないですし、今の実態と全く関係がないからです。
先ほどと同じく「昭和46年 自治省行政局振興課長通知」には次のように書かれています。
勉学のため寮、下宿等に居住するものの住所は、その寮、下宿等が家族の居住地に近接する地にあり、休暇以外にもしばしば帰宅する必要がある等特殊な事情のある場合を除き、居住する寮、下宿等の所在地にある。
と、原則的に学校の近くの下宿先を住所にするように書かれていますが、実際の運用では届出に対して、怪しくない限りはそこまで細かいことは確認しません。

1年以内の海外出張なら住所はそのままでよい
同じく自治省の通知には次のように書かれています。
海外出張者の住所は、出張の期間が1年以上にわたる場合を除き、原則として家族の居住地にある
1年以上となっているのは、一時的に帰国したとしても、国内での行政サービスを受けることも考えにくく、健康保険や国民年金の支払いなども発生するためだと思われます。
1年以上の長期入院なら病院が住所となることもある
こちらはかなりレアなケースになり、病院や施設などとも協議が必要になることがあります。
先ほどの自治省通知には次のように書かれています。
医師の診断により1年以上の長期、かつ、継続的な入院治療を要すると認められる場合を除き、原則として家族の居住地にある。
実際の市区町村の運用でも、病院や施設の承諾書などがない限りは病院や施設に住所を設定することはないと思います。
別の話として、特に、治療のためだけに市町村をまたいで住所を移した場合、国民健康保険料の負担を病院や施設があるところの住民の税金でまかなうことになり、不適切などの問題が出てきます。(そういった場合は健康保険は以前の市町村ということもあります。)
引き渡し前の建物に住所を置くことは基本NG
新築の住宅を建てた場合、住宅ローン控除の申請のために不動産登記の所有者欄の住所を新築の物件にしておかなければならないという説明を受けることがありますよね。
それは間違いではありませんが、実体として居住していないのであれば原則として新築物件に住所を置くことはできません。
その場合は、旧住所で不動産登記してから、新住所に引っ越しして不動産登記を修正するというのが本来です。
しかし、それでは司法書士への支払額が大きな負担になってしまうのも事実です。
実際の運用では、居住できる状態まで建物が完成している状態なのかを確認してから住所を設定されると思います。

離婚協議中の場合は実態にそった住所を設定する
離婚に向けて話し合いをしているが、まだ当分の間は離婚が成立しないという場合で、お子さんがいらっしゃる場合に、家族みんな同じところに住所を置いている人もいらっしゃいます。
お子さんの学区や児童手当などの行政サービスの都合上、住所を簡単に移せないということも理解できますが、あくまでも居住の実態ですから、夫婦が別居している場合は引っ越しの届出をすべきです。
引っ越ししても同じ学校に通うことができる場合がありますから、教育委員会に相談するとよいと思います。
住んでいないことが分かれば住民票を職権消除される
ここまでお伝えしたように、生活が多様化していればレアなケースがあることもあります。
他にも悪意を持って、実体のないところに住所を置いていらっしゃる方も中にはいらっしゃいます。
住民票がおいてあるのに住んでいないというケースで多いのは、賃貸アパートなどから退去したのに、住民票が置かれたままになっているというケースがあります。
居住実態がない場合には、市区町村職員の職権で住民票を消除することができます。(住基法第8条、第14条第1項)
多くの場合、アパートやマンションの大家さんからの通報だったり、市からの通知文書が届かない場合に調査をします。
調査の結果、居住実態がないことがわかれば、「職権消除」という事由で住民票は除票になります。
職権消除された場合、全国のどこにも住所がない状態となってしまいますから、行政サービスを受けることができない状態になってしまうため注意が必要です。
また、職権消除されてから、新たに住所を設定するときには、戸籍謄本と戸籍附票を事前に入手して添付する必要があります。
住民票は他の市でも取れる
単身赴任の場合や大学や専門学校に通っていて、住民票を実際には住んでいない家族の住所や実家に置いている場合、住民票を提出するとなると面倒に思っている方もいらっしゃると思います。
数年前までなら、家族にお願いして住民票を代理でとってもらって郵送で送ってもらうなどしている方も多かったと思いますが、マイナンバーカードを作っておけば、そんな必要はありません。
住民票を住所地以外の役所取得することは可能です。
「広域交付」と「コンビニ交付」の2つの方法があります。
広域交付とは、住所地の役所以外の役所でも住民票を取得できるという特例なのですが、注意点として広域交付の場合の本人確認には写真付きの身分証明書が必要になるという点があります。


住んでいないところに住所をおくメリット・デメリット
住んでいないところに住所を置くことについての可否の例は先ほどお伝えしましたが、実際にどう届出するのかはあなた次第です。
ここで考えておきたいのはそれぞれのメリットデメリットですが、ケースによって違いもあるかと思いますので、ひとつの例として考えてください。
メリット
- いろんな手続きをしなくても良い
- 住民票などの取得は代理で家族が取得できる
メリットとして感じることはそれほどなく、何もしなくても今まで通りの生活が送れるということでしょうか。
何も手続きをしないので、手間がかからないですし、住民票などの取得は家族に代理で取ってもらうこともできます。
デメリット
- 親の扶養から外れる可能性がある
- 親の職場の手当から外れる可能性がある
- 証明書などは自分が取得しなければならない
- 職場への交通費や住宅手当の支給に問題が出ることがある
①の親の扶養から外れるというお話ですが、実際には別居しただけで税の扶養は外れません。
しかし、親に注意してもらいたいのは、年末調整や確定申告時に今までは同居としていたところを別居として申告するように伝えておく必要があります。
②の親の職場の扶養手当ですが、これは企業の規程によるものですから、事前に確認しておく必要がありますね。
外れてしまうと、健康保険などにも影響が出る可能性があります。
国民健康保険の場合は、修学のために別居している場合も継続して加入できるなどの措置があります。(鳥取市の例)
④の職場の交通費や住宅手当ですが、こちらも住民票の住所を根拠にしていることが多いですから、正確な住所に住民票を移すように指示されるかもしれません。
会社にバレる可能性もゼロではない
黙っていればバレる可能性は低いかもしれませんが、そもそも虚偽の報告をしていることになりますからおすすめしません。
交通費などは住民票の住所を根拠として支給されることがほとんどですから、必要以上の交通費の支給を受けている可能性があります。
また、通勤中の事故などが起きた場合も、労災として認定されない可能性が高いです。
通勤中の事故などが起これば、職場にもバレる原因になります。
住民票を移さない場合の住民税はどこから課税される?
住民税の課税は、原則として「1月1日現在の住所地の役所から課税」されます。
ここでいう住所とは、住民基本台帳に記録されている、つまり住民票の住所になっています。
ただし、例外として実際に生活している居所の役所から課税されることもあり得ます。(地方税法第294条第3項)
この場合、役所間の連絡により、住民票の住所の役所からの課税はありません。

住んでいないところに住民票を登録することのまとめ
単身赴任や大学など修学している間に関しては、さまざまな手続きの観点から仕方のないこともあります。
しかし、住所を管轄する住基法が、実際の居住実態によって正確に記録することを考えると、住んでいないところに住民票を登録することはおすすめしません。
行政の仕組みは複雑で多様です。
あなたが得だと思っていても、実際には別の制度で損をしているということも十分あります。
その人個人のケースによってさまざまですから、どちらが得ということを言い切れる人はいないはずです。
住所は行政サービスや納税の基礎となっていますから、公平性の観点からも実態に合った届出をしましょう。