生活様式が多様化し、仕事場所を選ばない「ノマド」や、そもそも特定の住居を持たずネットカフェやホテルを転々としている人(アドレスホッパー)も増えています。
そんなとき問題となるのが「住民票を置く場所」です。
住所不定となってしまうと不都合になることも考えられるので、「ホテルに住民票を異動できるのか?」と疑問に感じる方も多いはずです。
では、各地のホテルを転々として生活している方はどこに住民登録すべきなのかについて、元住民登録実務経験者が見解を解説していきます。
結論からお伝えすると、完全に適法と言える登録先はなく、各自治体や担当者においても見解が分かれるところだと思います。
同じホテルでの滞在期間が1年未満で、ホテルを転々とするアドレスホッパーの方の場合、実家や家族のいる場所に住民票を置くというのがもっとも現実的かつデメリットも小さいと考えられます。
ここからは、法令の内容やメリット・デメリットを踏まえつつ解説してきたいと思います。

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そもそも住民票を登録する目的は?
住民票を整備する目的は、「住民の利便性の増進と、行政の合理化」のためです。
住民基本台帳法第1条
第一条 この法律は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)において、住民の居住関係の公証、選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とするとともに住民の住所に関する届出等の簡素化を図り、あわせて住民に関する記録の適正な管理を図るため、住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度を定め、もつて住民の利便を増進するとともに、国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的とする。
簡単にまとめると、正しく住民票を登録しておくことで、住民は行政サービスを受けられるし、行政は住民へ必要な連絡を行うことができるということですね。
イメージしやすい例を挙げてみます。
- 手当や給付金の交付
- 健康保険証などの利用
- 介護制度の利用
- ごみ処理の利用
- 災害時の避難に必要な状況確認・連絡
- 行政指導をする際の通知
あなたには関係のない制度もあるかとは思いますが、双方にとってメリットのあることなのです。
就職やクレジットカード作成にも住所は必要
先ほどは行政との関係についてお伝えしましたが、民間取引についても住所は重要になります。
会社員であれば通勤手当をもらったり、社会保険の手続きや緊急連絡先として住所が必要になりますし、クレジットカードやスマホの契約、お金を借りたり、保険契約などをする場合には居所を明らかにするために住所が必要となります。

住民票に関する住民と行政それぞれの責任と義務
ここまでで、ホテル暮らしのアドレスホッパーの方であっても住民票を登録しておく必要があることがわかっていただけるかと思います。
住民票を適切に整備するために、市町村役場と住民それぞれに責任と義務があります。(住基法第3条他)
- 住民票の作成
- 住民からの届出による住民票の修正や消除
- 住民に対する指導など
- 転入など住民票記載事項に関する変更を正しく届ける
- 住民基本台帳の正確性を阻害するような行為をしてはいけない

ホテルの住所を住民票に登録できるのか?
そもそも「住所」はなんなのかということになるのですが、民法第22条では「各人の生活の本拠をその者の住所とする。」と規定されています。
また、民法第23条では「住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。」と規定されています。
ホテルは一時滞在場所に過ぎないため、住所とは言えないと解釈するのが通常だと思われます。
転入や転居は住民の届出が必要ですが、その際にその番地が存在する番地であるか、また、そこはアパートやマンションなどの集合住宅であるかなども確認されます。
役所内のシステムや担当者の技量にもよりますが、届け出た住所番地上にホテルが建っていると判明した場合、担当者からの聞き取り調査や、届出自体を受け付けられないと判断される可能性が高いです。
逆に、担当者が番地の存在だけを確認して、詳細の確認を怠った場合には、ホテルの番地を住民票に登録できてしまう場合があります。
しかし、この場合は担当者のミスであることや、その後の実態調査などにより、後日住民票が職権消除されてしまう可能性があります。
職権消除については「住民票の職権消除について解説」を参考にしてください。
事情によりホテルに住民票を置ける可能性もある
ホテルに住所を置くことは適切ではないということを書きましたが、特別な事情のあるケースも想定されます。
もし、ホテルに住所を置くことができるケースを考えると、次の2点は必須の条件になると思われます。
- ホテル側が住所を置くことを承諾している書面を書いてくれること
- 生活の拠点とみなせるほど長期間滞在する予定であることを証明できること
これは病院などに入院しているなど、本来住居としてみなせない場所を住所としたケースを参考にしました。
今回のケースに近いと考えられるものを紹介しておきます。(引用:昭和46年3月31日 自治振第128号「住民基本台帳法の質疑応答について」)
どちらも1年という期間が目安になっていますので、ホテルの場合にも滞在期間によっては検討の余地があると考えられます。
私は実際に、病院住所への転居届を受け付けたことがありますが、その際に病院側の承諾書の添付をお願いしました。
これは、患者の住所が病院内にあることを病院に認識してもらうことで、役所からの通知文書などが届くことを想定してもらう必要があると考えたからです。
また、住民の口頭での説明だけで病院に住所を置くことを許可してしまうと、多くの人が勝手に病院に住所を設定する可能性があるため、承諾書の添付を求めることで後のトラブルを回避することができると考えたからです。
ホテル所在地の市役所窓口で必ず相談するようにしてください。
ホテル暮らしの方がホテル以外に住民票を置ける可能性のある場所
ホテルに住所を置くことができる可能性があることをお伝えしましたが、ホテルを転々とされる場合はほぼ無理になります。
ホテル以外で住民票を置く場所として検討できるのは次の3ヵ所かと思います。
どちらも、住民票を登録する目的を少しでも満たせるよう、郵送の転送や電話などで役所と連絡が取れる状態を優先して候補としました。
いずれの場所も完全に適法とは言えないため、自己判断をお願いします。
実家や親戚と同じ住所
個人に個別の事情がある場合、家族と同じ場所を住所として認定するというケースが、先ほどの質疑応答集にいくつか記載されています。
家族や親戚が相手のため、多くの方が特にデメリットを感じることなく実行できる方法だと思います。
住所登録が可能なレンタルオフィス
小さな法人の方や、個人事業主の方向けに住所を登録を承諾しているレンタルオフィスがあります。
郵送の転送だけでなく、電話の転送サービスまで提供しているところもあります。
ただし、勘違いされる方もいらっしゃいますが、想定されているのは法人や個人事業主の事務所の住所、正確には所在地のことで、個人の住所とは書かれていません。
デメリットとしては、市役所での転入届時に拒否される可能性や、レンタルオフィスの利用規約にも反している可能性があるため、事前の確認が必要になることです。
安いワンルーム
資金に余裕がある方は、賃貸している部屋をそのまま借りたままにするという方法です。
デメリットとしては、当然無駄な費用がかかることで、さらには市役所の実態調査により住民票が職権消除されてしまう可能性があるという点です。
定期的に賃貸している部屋へ戻るなど、生活実態があるようにする必要がありそうです。
ホテル暮らしの場合、住民票はどうやって入手する?
ここまで、住所そのものをホテルに置けるのかという点について話してきました。
それとは別に、ホテル暮らしの人が何かの契約のために住民票が必要となったとき、どのようにして発行すれば良いのかということも問題のひとつです。

- 住民票のコンビニ交付
マイナンバーカードを使用して、近くのコンビニの多目的端末から発行することができます。
(原則6:30~23:00まで利用できますが、一部市町村によっては時間帯が異なることがあります。) - 住民票の広域交付
近くの市町村窓口(住んでいない役所でも可能)で、マイナンバーカードや運転免許証などの顔写真付きの身分証明書を持って申請することで発行ができます。
(広域交付で住民票発行をお願いしますと言えばスムーズです。)
市役所からの返送は転送不要郵便で送られてくるため、住民票が滞在しているホテルへ届かないからです。
まとめ
住居を持たずにホテル暮らしをするアドレスホッパーの方のケースは、現在のところかなり少数派となり事例が少ないため、行政側としても適切な対応方法がまだ決まっていないと思われます。
今後、先の質疑応答集のような形で統一的な運用が出る可能性がありますが、マイナンバー制度の開始により、マイナンバーカードを使った行政サービスが増えていくことを考えると住所を設定してマイナンバーカードを使用する頻度が増える可能性が高いでしょう。
その際、住民票が職権消除されるようなことがあればマイナンバーカードも同時に失効していまいます。
大手サイトで、ホテル暮らしの前にクレジットカードを作っておくようにしましょうなどと案内していることがありますが、住所変更を怠った場合はカードの補償対象外になるなど大きなデメリットついて書かれていなかったり、そもそもカード会社の規約を無視することを説明していません。
もっとも大切なことは、あなたの社会的責任やリスク、行政から得られるサービスが得られにくいということを考慮して、検討することです。
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