着物の歴史は一言では語り尽くせません。
その時代を反映したデザインもあれば仕立ての方法などの違いもあり、それも着物の魅力の一つです。
なかでも近頃注目されているのが個性的なデザインが多い「アンティーク着物」です。
着物好きな人でも意外と知らない、アンティーク着物の魅力はもちろん、生地にはどんな特徴があるのか、また見分け方について紹介します。
またアンティーク着物のアレンジ方法についてもわかりやすく解説していきます。
アンティーク着物とは
一般的にアンティーク着物は、江戸時代・明治時代・大正時代・昭和時代などの戦前に作られた着物のことを言います。
着物は日本の文化と深く根付いている衣類ではありますが、その時代によっても大きな違いがあります。
それぞれの時代の違いを楽しめるアンティーク着物が注目されています。
アンティーク着物は今の着物と比べてサイズ感が小さく仕立てられています。
現在よりも小柄な女性が多い時代に作られたこともあり、サイズ感が合わせにくいと感じることもあるかもしれません。
丈の長さもちぐはぐな部分があるので、少し手を加えないと着こなせない場合もあります。
この辺りの違いもアンティーク着物の楽しみ方だと思える人にこそおすすめします。
時代ごとに変わるアンティーク着物の特徴とは
アンティーク着物は時代とともに大きく変化しています。
まずはそれぞれにどんな違いがあるのかについて、わかりやすく説明していきたいと思います。
明治時代の着物
着物というと華やかな印象の色柄をイメージするかもしれません。
明治時代に関しては奢侈禁止令の名残が残っていたため、シンプルで落ち着いたデザインの着物が多く、木綿の着物がよく着られていました。
着物はもちろん帯にも茶色や黒を使ったものなど、地味な印象のものが目立ちます。
模様や柄についても袖や衿の部分に少しついている程度です。
また、明治時代の着物にも紋が描かれているものがありますが、少し大きめなど存在感があるものがメインになります。
明治維新が起きたあとは徐々に洋装化が進んでいきます。
その影響もあり地味な色の着物から、明るい色柄を使った着物も増えていきます。
また明治時代の後半より着物の生地が柔らかいものも使われるようになるなど、素材にも変化が見え始めた時代でもあります。
大正時代の着物
大正時代の着物は洋服の文化が広がったこともあり、一気に華やかな着物が広がっていきました。
例えば高級感のあるバラや、可憐なチューリップなどを用いた着物も登場し、おしゃれとして楽しめるようになります。
「海老茶式部」などの女性の制服として袴ファッションを着るのが流行しました。
「海老茶式部」の着物が主流だった時代から、矢絣柄の着物や、行灯袴を使った着物を見かけるようになりました。
現代でいうところの大学の卒業式などで着用している物というと、イメージしやすいかもしれません。
華やかな着物はお祝いの席にも最適です。
矢絣柄が流行したこともあり、この着物にブーツを履くスタイルの女性も見かけるようになりました。
まさに大正時代の女性のシンボル的なファッションとしても知られています。
大正時代の後期になると幾何学調などのアールデコの影響を受けた着物が登場し、抽象的な色柄を使った着物を普段着として楽しむようになります。
日本の着物文化にヨーロッパのデザインを組み合わせたおしゃれな着物が多く、華やかなデザインが特徴です。
昭和時代の着物
洋風スタイルの洋服が一気に広がりを見せたこともあり、女性のファッションが大きく変化したのが昭和時代です。
アールデコの影響を強く受けていたことから、昭和時代にはポップなデザインの着物を多く見かけるようになります。
幾何学模様は銘仙と呼ばれることもあり、普段着でもよく着られている柄となりました。
女性の制服はセーラー服が一般的なものに変わり、着物を着る機会が少なくなっていきました。
昭和に入っても大正ロマンのデザインを強く引き継いでいましたが、同時にビーズバッグやレースの小物なども登場します。
昭和の戦中以降は着物から動きやすい洋服に変わっていったこともあり、和服文化が一気に衰退していきます。
着物から割烹着、もんぺを着用するようになり、筒袖のものを多く着る時代に変わっていきました。
戦後になってもその傾向が戻ることはなく、家庭用ミシンが普及したことものあり洋服文化が広がりを見せるようになりました。
着物には時代によってこれだけの変化がありました。
特に外国からの影響を受けた時代なのもあり、日本の着物を見ればいつ作られたものなのかがわかるのも、アンティーク着物の面白さだと思います。
特にレトロ柄が注目されるようになってから、アンティーク着物の人気は高まりを見せています。
今では見かけることのない色柄が多いのも、個性的ですし、他の着物と差別化できる特徴もあります。
アンティーク着物の特徴とは
アンティーク着物には現在の着物とは違った特徴があります。
例えば、裏地が赤くできているのも特徴のひとつで、紅絹と呼ばれる素材が使われています。
これは女性の身体を冷やさないようにするためのものとされています。
時代によっては袖や衿の一部が赤くなっているものもありますが、戦後に作られたものになり偶然赤い布を使っているだけに過ぎません。
また、丈感にも大きな違いがあるのも、アンティークならではと言えますね。
現在の着物の掛衿が帯に隠しながら着用したり、衣紋を大幅に抜くような見せ方をします。
特に指定の形があるわけではなく、着る本人がこの辺りも調整できるようになっています。
ただし、戦前の着物になると、すべて見せるような作りになっているのです。
アンティーク着物は掛衿を大きく見せる作りになっているので、見せないようになどの調整ができません。
この辺りは好みの違いもあるかもしれませんが、掛衿の違いも特徴的な違いの一つです。
さらに、身八つ口の部分が長く袖がついている位置が高くできている着物がほとんどになります。
着物のなかに着る肌着(長襦袢)を着る人がほとんどだと思いますが、今のサイズ感になると動いたときに見えてしまう可能性があります。
どんなに素敵な着物を着ていても肌着が見えてしまっては恥ずかしいですよね。
アンティーク着物に合わせやすいように襦袢を変更するなどの調整も必要になります。
できれば戦前に作られた長襦袢があると、着物との合わせにも違和感が減るはずです。
アンティーク着物には現代の着物とは違う、これだけの特徴があります。
そのため、今まで着物を着たことのない人だと着こなしが難しいと感じることもあるかもしれません。
アンティーク着物を上手に着こなしてこそ、おしゃれ上級者と言えるのではないでしょうか。
アンティーク着物を手に入れるときの3つの注意点
アンティーク着物として販売されているものを手に入れるときの注意点があります。
1.劣化の状態を確認
着物によっては50年~70年前に作られている着物もあります。
着物を保管している状況によっても違いますが、経年劣化が起こり、生地が傷んでしまう弱くなっている可能性も十分に考えられます。
そのため生地の傷みを気にせずに購入してしまうと、普通の着物のように着用できず、破けてしまう恐れもあります。
なかでもお尻や膝の部分など生地が薄くなりやすい場所の確認はしっかりと行いましょう。
どんなに高級な生地を使っていても着物は着ずに保管すれば傷んでしまうこともあります。
購入以前にこの辺りも確認できるといいですね。
2.小物の状態も確認
着物と同時にアンティークの帯を合わせると全体の統一感が出ておすすめです。
ただし注意しなくてはいけないのが、帯も一緒に劣化している可能性があることです。
素材によっては帯が破けやすくなっていることもあるので、劣化が激しい帯を購入しないように注意してください。
また、アンティーク帯は短めに作られているものが多いので、思い通りの着こなしができない可能性もあります。
また、昭和初期に流行したビーズ素材のバッグを合わせるのもおすすめ。
アンティーク着物で全体のコーディネートを考えるのも楽しいかもしれません。
3.リメイク用してできることもある
アンティーク着物の生地が劣化している場合、リメイクして使う方法もあります。
他にはないレトロなアンティーク着物だからこその味が出ますし、思わず「どこの?」なんて聞かれるような上級者の着こなしが楽しめるかもしれません。
また、リメイクに使える部分が少ない着物の場合は、シュシュなどの髪留めを作るのもおすすめです。
洋服のコーディネートのワンポイントになりますよ。
まとめ
アンティーク着物を着こなすのは初心者には少し難しい部分もあるかもしれません。
現在はさまざまな柄の着物が登場していますが、他にはない個性を追求したい人、昔ながらのレトロな柄が好きな人にもおすすめです。
日本の時代の変化を着物の柄を通して実感できるのではないでしょうか。
ただし生地の劣化なども必ず確認しておき、問題なく使えるかどうかもしっかりと見極めるようにしてくださいね。