着物選びと同じぐらい重要なものといえば、下に着る「下着」の選び方ではないでしょうか。
着物を着るのに一度は耳にしたことのある「長襦袢」や「肌襦袢」ですが、それぞれどんな違いがあるのか知らない人も多いのではないでしょうか。
着物をきれいに着こなすためにも下着選びはとても重要なものになります。
基礎知識や選ぶ時のポイントをわかりやすく解説していきたいと思います。
着物の下着とは
着物の肌着とは、主に肌襦袢と呼ばれているもののことです。
似たような名前のもので長襦袢がありますが、同じ下着でも全く別のものになります。
そのため肌襦袢と長襦袢は、着物を着るうえでどちらも必要なものであるのがわかると思います。
肌襦袢の目的は着物が直接肌に触れないようにするための肌着になります。
衿や袖が長くはできていないので、着物からは見えない作りになっています。
肌襦袢は基本的には肌着になり袖丈が短い作りになります。
肌襦袢にも上下一体型のワンピースタイプがあるので、見た目が似ていることから長襦袢と勘違いしている人もいます。
肌襦袢と長襦袢は役割が全く違うものです。
他にも似ているもので半襦袢と呼ばれるものがあります。
肌襦袢と同じ生地で作られているのですが、衿の部分は長襦袢と同じ半衿がついている、肌襦袢と長襦袢を組み合わせたようなものです。
見た目は長襦袢に近いことから、「うそつき襦袢」なんてかわいらしいあだ名がついています。
半襦袢は見た目が長襦袢になるので、これ1枚で代用ができ気軽に着用できる良さもあります。
その場合、下に巻くものとして裾よけを一緒に使う必要があります。
どうして着物に下着が必要なの?
着物を着るのに下着をつけるのが面倒くさい…なんて声を聞くこともあります。
着付けをしていて最初に肌襦袢を着て長襦袢を着て…なんてやっていると手間もかかりますし時間も必要になります。
着物の下に肌着を着る理由には大きく4つあります。
それぞれ説明していきますね。
① 着物の汚れを防ぐため
今でこそ着物の下に着る肌襦袢がありますが、昔は今のような下着はありませんでした。
着物はすぐに洗えるものではなく、メンテナンスも大変です。
着物が肌に直接触れていると汚れやすくなりますし、そのままにしていると着物を傷める原因になってしまいます。
肌襦袢は簡単に洗えて、着物の清潔さを保つ目的で作られたともいわれています。
② 汗の吸収性を高めるため
肌襦袢は、吸収性が高く肌触りが良い素材をメインに使っています。
もちろん、肌襦袢によっても違いますが、着物を着ていると夏の暑さで汗がたくさん出た経験もあるのではないでしょうか。
汗が着物についてしまうと黄ばみやカビの原因になりますし、着物を着ているときも不快感を覚えることも。
肌着がしっかりと汗を吸収してくれるからこそ、サラサラとしたさわり心地で着物が楽しめるのです。
③ 冬の寒さ対策のため
肌着にも、夏用の薄手のものと冬に着る少し厚手のものもあります。
夏用は手をかざしてみるとほんのり透けるものになり、吸収性を高くして涼しく快適に着たい人向けの肌着です。
冬用の肌着は吸収性の高さはもちろん、防寒を目的にしたものも多く寒い冬でも冷えをしっかりと防いでくれます。
季節に合わせた肌着を選ぶことで、その季節ならではの不快感から開放されるのを実感できるはずです。
④ 歩きやすさのため
着物を着て歩いたことのある人なら、一度は歩きにくさを感じたことがあると思います。
足が着物の裾にもつれてしまい歩きにくく少し歩いただけでも疲れてしまう人もいると思います。
肌着の中でも、下に巻く「裾よけ」はすべりのいい素材を使っていることもあり、歩いている時のもつれはもちろん、静電気が起こりにくく、歩きにくさを感じることも少なくなります。
肌着の種類にもよりますが、着ないまま歩くよりも何倍も動きやすくなります。
長襦袢を選ぶ時のポイントは
長襦袢は、着物の袖口からちらっと見えるものです。
着物にこだわっている人であれば、長襦袢のデザインや機能性などもこだわりたいと考える人も少なくありません。
ちらっと見える部分にまでこだわっている女性はとても素敵ですよね。
長襦袢を選ぶ時のポイントについて説明します。
サイズを確認する
長襦袢を選ぶときは、まず自分にあったサイズのものを選ぶ必要があります。
長襦袢が長すぎると着こなしがかっこ悪くなってしまうこと、ときには着崩れを起こしてしまうこともあります。
着物は体のラインが出るので、長襦袢のサイズ選びを間違えて着るのは絶対に避けたいものです。
既製品の場合は、Sサイズ・Mサイズ・Lサイズの3種類がありますので、実際に自分の身長だったり体重などを考慮したうえで、自分にあった長襦袢を選ぶようにしてください。
長襦袢は消耗品でもあるので、サイズを大きめに買いすぎないようにしましょう。
もし試着できるお店などがあれば、一度腕を通してみてサイズ感を確認してもいいと思います。
着ていく場所やシーンによって使い分ける
どこに着ていくための肌着が欲しいのかによっても変わります。
例えば黒留袖や色留袖などの格式の高い留袖を着る場合、フォーマルな場で着る機会が多いので長襦袢は目立たないものを選ぶのが無難です。
無地のもの、もしくは着物と同系色にしておけば、ちらっと見えても問題ありません。
普段着用のおしゃれ着物の場合は、プライベートで楽しむものですので遊び心があるぐらいでいいと思います。
色留袖に合わせて長襦袢を選んでもいいですし、あえて柄付きのものにしてもかわいいのでおすすめです。
どこに着ていくのかを基準に選んでみてもいいと思います。
万能な白は1着持っていると着物を嗜むものとしても安心です。
素材を確認する
長襦袢でも製造しているメーカーによって大きな違いがあります。
例えば近頃よく見かけるのが、ポリエステルなどの化学繊維を使った長襦袢です。
洗濯機で回してもシワになりにくいことから、比較的メンテナンスが簡単な肌着としても知られています。
化学繊維なので値段も手頃ですしデザインも豊富です。
ただし、ポリエステルは汗の吸収性が悪いこと、通気性の悪さなどのデメリットもあります。
そのため暑い時期だと着心地の悪さを感じることもあるので、肌が強くとにかく値段重視で選びたい人におすすめです。
化学繊維でも高いお値段で機能性重視のものもあるので、総合的に選んでくださいね。
もしお値段を気にしないのであれば、シルク製の長襦袢もおすすめです。
シルク製の長襦袢は、見た目も自然な光沢感があるので高級感もあり、女性としての気品も感じさせてくれます。
また、見えたときにも生地感の良さを感じますので、フォーマルな場でも自信を持って着こなすことができます。
大人の女性ならではの着物のおしゃれを楽しみたい人には、シルクが向いています。
機能性や洗濯ののしやすさなども合わせて確認しておくと安心です。
普段から乾燥機も使う人だとウール製の長襦袢はあっという間に縮むのでおすすめしません。
ボディラインが強調されてないか?
着物の肌着を選ぶときにボディラインが強調され、全体のバランスが悪くなっていないかも確認しておきたいところです。
そもそも着物のときにブラジャーを外す理由をご存じでしょうか。
着物の下にブラジャーがあると着物の衿がしっかりと固定されなくなり、着崩れが起こりやすくなります。
直しても何度も着崩れしてしまうと、せっかくのお呼ばれも楽しめなくなってしまいますよね。
着物はボディラインの出たあわせよりも、上下が寸胴になっているほうが美しいと考えられています。
いわゆるこけし型と呼ばれる体型になり、着物を着るうえで最も理想的です。
着物を着るときにボディラインが強調されているものは、下着も食い込んでしまっていたり着心地も悪くなります。
自分にあったサイズでボディラインが強調されていないものを選んでください。
着物の長襦袢のメンテナンス方法とは
長襦袢は毎回メンテナンスが必要です。
一度脱いだあとに着物用ハンガーなどを使って、湿気を飛ばしていきます。
このあたりの管理のしやすさも長襦袢を選ぶ時のポイントといえるかもしれません。
自宅で洗う場合、衿を外すのを忘れないようにしてくださいね。
クリーニング店の場合はお店側で衿を外してくれるのでそこまで心配はいりません。
半生乾きの状態でアイロンをかけ、シワが残らないようにしっかりとお手入れをします。
長襦袢は大切に使えば数年は使えますし、メンテナンスをせずにそのまま放置なんてことにならないようにしてくださいね。
長襦袢に汗や皮脂汚れがついたままだとカビの原因になり、ダメになってしまいます。
せっかく高いものを買っても意味がありませんし、メンテナンスはとても重要です。
まとめ
着物の肌着や長襦袢は、実際にあると着物の着やすさや快適性が格段に変わるのを実感できるはずです。
正直、こんなに違うの!?と驚いてしまう人もいると思います。
その季節にあった肌着もありますし、自宅でのメンテナンスのしやすさなども含めて、自分にあった肌着を探すようにしてくださいね。
肌襦袢と長襦袢セットで用意しておき、着崩れしにくい着付けで快適な着物ライフを楽しみたいものですね。肌着選びはとても重要ですよ。