着物に家紋をつけると格が上がると言われています。
着物の種類によっても家紋をつけるかどうかが変わります。
着物に家紋と言われてもどんな違いがあるのか、数の違いや種類などわかりにくいと感じている人もいるのではないでしょうか。
そもそも家紋とはどんなものなのか、歴史や文化なども含め解説していきたいと思います。
家紋付きの着物を着用するシーンや着物の種類
着物に家紋をつけることがあるのは、主に以下の4つでしょう。
- 黒留袖
- 色留袖
- 色無地
- 喪服
ちょっとしたお出かけで着るカジュアルな着物に紋をつけることがなく、フォーマルな着物にだけ紋がつきます。
家紋が入っているだけでも着物に特別感がありますし、正装や礼装などきちんとした場所に着ていくのに向いています。
着物につける家紋は種類や用途に応じて一つ紋・三つ紋・五つ紋などの種類が変わっていきます。
一つ紋は背中の中心部に施されており、パーティーなどに着ていくことが多いと言われています。
中には結婚式に着ていく人もいますが、一つ紋は目上の方とのお食事に行くときなどに着ていく着物に向いています。
三つ紋は、背中と両方の袖に一つずる紋章が施されていることが多くなります。
一つ紋よりも格式の高い場所で着られることが多く、入学式・卒業式・披露宴などに着ていくことが多いでしょう。
正装として使えるのはもちろん、幅広く活躍できる家紋でもあります。
五つ紋は最も格式の高い礼装になり、背中の中央に一つ、両方の袖や両胸に一つずつ描かれています。
一族の代表でもあり、親族の結婚式に着ていくなど特別なときに着用します。
無地の袖だったり江戸小紋などのシンプルなものには、ちょっとした紋がついているだけでも印象が変わります。
おしゃれ紋は家紋をそのままつけるのではなく、アレンジしたものだったり、好きな絵柄を使ったものがメインになります。
家紋を施すのも染めたり刺繍で表現されることが多く、多彩な色を使うなどの遊び心がある文様になります。
礼装などの家紋とは違った意味合いがあり楽しめるので、見た目こそ似ているものの全く違うものとして考えてもいいと思います。
家紋の基礎知識とは
そもそも家紋とは、自らの家系を示すための大切な印です。
家紋の図柄のモチーフになっているのが400種類ほどあると言われています。
家紋のモチーフには自然の草花や自然・生き物をはじめ、建物や景色、人物、道具の模様などを取り入れている家紋もあります。
家紋のなかには長寿や子孫繁栄などの願いを込めたものもあります。
これらの文様は、古来の中国大陸から輸入されたものになり、日本では平安時代に牛舎や調度品に身分を記す方法として貴族の印として定着していきます。
戦国時代になると敵味方を識別するための印としても使われるようになり、江戸時代には武士の衣類にも家紋がつけられるようになります。
明治時代になると庶民の間に家紋が広がり、現在に伝えられています。
家系を継いでいくときに家紋を引き継いでいる人も多いのではないでしょうか。
着物の種類によっても家紋を付ける場所が違います。
家紋の数が多ければ多いほど、格式が高いと言われています。
家紋は地域によっても考え方が違う
着物などの衣類に家紋をつけるのは、日本ぐらいだと言われています。
世界にも家紋があるものの、あくまでも大切な文化として引き継がれています。
また、家紋は関東と関西でも違いがあります。
女性は結婚すると嫁ぎ先に入ることからも、家紋が変わります。
女性の場合は嫁いだ先の家紋になってしまいますが、母から娘と結婚して名前が変わったとしても引き継がれていくものとして知られています。
事前に話し合ったうえで家紋のつけかたを変えている場合もありますが、地域によっても一律なわけではありません。
家紋については統一化されたルールが存在するわけではないので、その家によっても考え方が違います。
なかには家紋を大切にしていてどうしても残したい!と考える家もあると思います。
執着やこだわりがない家もあると思いますので、必ずしもこの形をとったから正解があるわけではありません。
ちなみに、外輪がついているものが男紋になり、ついていないものが女紋です。
それぞれに違いがあるので、見分け方を覚えておきましょう。
レンタル着物の場合、家紋はどうなるの?
家族から代々引き継がれている着物ならまだしも、礼装をレンタルするケースもあると思います。
かつては嫁入り道具の一つとして黒留袖を贈り物として引き継ぐことが多かったのですが、現在ではとても珍しいものになりました。
黒留袖の考え方が変わっていることもあり、なかには必要なときにレンタルする人もいると思います。
レンタル着物になると家紋はどうなるのか、気になる人もいると思います。
レンタル着物の場合は、通紋と呼ばれる、便宜上の紋をつけるのが一般的になります。
なかでも最も多く見かけるのが五三の桐と呼ばれるものになります。
黒留袖は最上級の礼装ではありますが、厳格なルールが決められているわけではありません。
なかには受け継いだり借りることもありますし、あなたの本来の家紋とは違ったものがついていたとしても、問題になるようなものではありません。
レンタル会社によっては上から家紋をつけられるサービスを行っているところもあります。
着物の家紋が気になる人は、この辺りも含めて検討してみるといいかもしれません。
家紋のなかでも有名なものを紹介
家紋には1万種類以上があると言われており、似たように見えても微妙に違うものがたくさんあります。
原型となるモチーフは300~400種類になります。すべての種類を把握しようとしても難しく、なかでも特に知名度が高く知られている家紋から紹介していきたいと思います。
扇紋
家紋のなかでも縁起の良さで知られる扇をモチーフにした家紋で、扇には“末広がり”の意味があります。
扇が開いた状態のものもあれば、なかには閉じた状態の扇が描かれているものも見かけます。
扇は現在でも使われているものになりますし、誰もが一度は使ったことのあるとても実用的なアイテムになります。
扇の質実剛健の考え方が武士の生活に合っていると考えられています。
シンプルながら華やかな印象になるのも特徴です。
銀杏紋
長寿や子孫繁栄のシンボルとしても知られているのが、銀杏紋です。
銀杏といえば、日本の四季を表すものでもあり、秋になると黄金色の美しい風情を添えてくれる存在です。
季節の訪れを感じさせてくれたり、現在では神木としても拝められています。
銀杏は今でこそ日本でよく見かける木になりますが、中国から入ってきた外来種です。
銀杏はアレンジしやすいデザインであることから、豊富なバリエーションがあります。
銀杏の葉を使った銀杏紋もありますし、花を使っているものもあります。
柏紋
デザイン性のある昔ながらの由緒正しい家紋として知られているのが、柏紋になります。
昔から神様のお供え物として使われてきた神聖なアイテムで、神々しい家紋としても人気があります。
もともとの柏紋は1枚の葉だけを描いていましたが、現在では3枚の葉を用いたデザインが人気です。
アレンジのしやすさもあり、4枚、5枚の柏の葉を使った家紋も登場しています。
柏紋は、歴史が深いので鎌倉時代にはすでに家紋として使われていました。
神様をイメージさせることから、武家の家紋として選ばれていたものです。
片喰紋
数ある家紋のなかでも、最も人気が高いものといっても過言ではありません。
なかでも北陸地方や山陰地方などで人気のある家紋になり、そのまま片喰紋を使うこともあれば、他の家紋と合わせて使う場合もあります。
平安時代や鎌倉時代に使われていたことも多く、生命力がたくましいことや見た目がおしゃれで優美なデザインなのも、人気の理由です。
また昔から子孫繁栄の植物としても知られているので、縁起のいいデザインです。
片喰紋の家紋を一度は見たことがあるなんて人も多いのではないでしょうか。
桜紋
日本の花ともいえるサクラですが、春を告げる風物詩でもあります。
短い期間ではあるものの美しく咲き誇る姿は、誰もが心を奪われる存在ではないでしょうか。
サクラはちりぎわが潔いことはもちろんその短かさが美しいと言われています。
武家に多く好まれた家紋でもあり江戸時代に入ってはじめて登場した比較的新しい家紋になります。
とても美しい家紋ではあるものの、早くに散ってしまうため縁起が悪いと考えられ、「使っている人が少ないのでは?」と考えられています。
もともとは位の高い武将が使用していたそうです。
梅紋
もともとは中国から入ってきた家紋になり、日本でも平安時代から使われていた古いモチーフになります。
シンプルに描いた梅の家紋もあれば、丸で囲ったものもありますし、梅紋にも種類はさまざまです。
梅紋には天神さまと大きな関係があると考えられており、歴史の長さにも定評があります。
長く人気のある家紋として知られていますが、主に西日本から吸収にかけて多く見かける家紋です。
他にも井筒や沢瀉紋、桔梗紋、亀甲紋など家紋の種類はたくさんあります。
同じモチーフでもちょっとしたアレンジによって見た目の印象が変わるのも、家紋の面白さといえますね。
まとめ
着物の家紋の種類や使い方など、意外と知らないことがたくさんあったなんて人もいるのではないでしょうか。
着物の種類によっては家紋をつけないケースもありますが、家紋の意味を知っていると、より着物の奥深さを実感できるはずです。
家紋といっても形式張ったものばかりではありませんし、あなたならではのおしゃれとして取り入れてみるのもいいかもしれませんね。