式典やお祝い事などで着るのが「留袖」と呼ばれる着物です。
冠婚葬祭に出席したことのある人なら一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
でも黒留袖と色留袖の違いがよくわかっていない…なんて人も少なくないと思います。
それぞれの違いや、立場による選び方など、留袖の基本について、徹底的に解説していきます。
黒留袖とは
地の色が黒の留袖を「黒留袖」と言います。
濃い落ち着いた色味の黒は、浜ちりめんや丹後ちりめんを使い作られています。
染め抜きの5つ紋と、白の比翼仕立てにしていることです。
これは「お祝い事が重なりますように」といった演技を担ぐ意味があります。
黒留袖は慶事ごとなどでゲストをお迎えするときの装いになります。
そのため結婚式にゲストとして招かれた友人が、黒留袖を着用するのはマナー違反になります。
あくまでも黒留袖は親族が着るものになるので、そのときのケースに合わせて選ぶようにしましょう。
帯揚げや帯締めなども黒留袖には白を選ぶのが基本です。
少しでも違う色が入っているとカジュアルな印象になってしまい、お祝いの席ではふさわしくないとみなされてしまうので、注意してくださいね。
色留袖とは
色留袖の明るい色調から、お祝いの席を華やかに彩るものが色留袖です。
色留袖も黒留袖と同じように、襟や袖の部分を二枚重ねに着用して見える比翼仕立てを取り入れています。
色留袖はどんな色を選ぶのかによっても印象が変わります。
使用する生地に決まりはありません。
全体的にパステルカラーが多いため、日本人の肌の色とも自然にマッチします。
そのときの季節や、用途に合わせて何色の色留袖を着ようかなと考えるのも面白いものです。
色選びで迷ったときは優しい雰囲気で誰からも愛されるピンクや、クリーム色などを選んでおくと無難です。
クリーム色は一見地味に見えてしまいがちですが、合わせる袋帯によっても印象が全く違います。
高身長の人:大判の柄が入ったものがおすすめ
低身長の人:シンプルなデザインがおすすめ
黒留袖も色留袖も合わせる小物にはルールがあります。
例えば、留袖の下に着用する長襦袢や足袋は必ず白を着用します。
半衿は白色の塩瀬の羽二重、帯揚げ・帯締めは白金銀をあわせます。
お祝いでの扇子は“末広”と呼ばれ、黒留袖の場合は黒骨のものを選びます。
扇子は基本的に儀礼用として持っているものになるので、暑いときでも扇子として仰ぐのはマナー違反と言われています。
扇子は帯の左胸のところに挿しておきます。
留袖の歴史とは
今では当たり前のように着されている留袖ですが、もともと二日本誕生したのは江戸時代だといわれています。
留袖は、大人の女性が着るもの全般を指していた時代もありますが、いつからか身内のお祝いなどで黒字の留袖を着る習慣が広まっていきました。
その後、留袖ではなく黒留袖と呼ばれるようになり、既婚女性の正式な礼装として現在にも伝えられるようになりました。
どうして黒だったのか、これについては西洋文化の黒地フォーマルが影響しているのではないかと言われています。
黒留袖と色留袖の3つの違い
黒留袖と色留袖はどちらも、お祝いの場で着る着物です。
着物として使う場所など基本の考え方には大きな違いはありません。
黒留袖と色留袖にはそれぞれの違いを比較してみましょう。
1.色の違い
見てすぐにわかる違いだと思いますが、色の違いがあります。
黒留袖は、名前から見てもわかるように黒地のみの留袖です。
色留袖は、淡い色を中心として多様な色を見かけます。
例えば淡い桃色(ピンク)や、水色、クリーム色、紫などもあります。
黒留袖はシックで落ち着いた大人の印象になり、色留袖はかわいらしい雰囲気や女性の柔らかい雰囲気を感じさせてくれる留袖です。
2.紋の数の違い
- 黒留袖:5つの紋
- 色留袖:1~5の紋のものがある
黒留袖には5つの紋が描かれており、留袖のなかでも特に格式の高いものとして知られています。
色留袖にも紋がついていますが、数に正式な決まりがあるわけではありません。
色留袖のなかには1つだけついているものもありますし、3つの紋がついているもの、5つの紋がついているものもあります。
1つ紋はカジュアルスタイルの結婚式や披露宴に出席するときや、親族の入学式や卒業式などの慶事ごとに出席するときに着ます。
3つ紋は結婚式のゲストとしての出席はもちろん、祝賀会やパーティーなどの式典に参加するときに着ます。
色留袖も同様に、5つの紋がついているものが、最も格式の高い留袖になります。
【注意】
基本的に招かれる側(ゲスト)は、招く側(ホスト)よりも、一つ格式を下げたものを着用するのが着物のマナーとして考えられています。
そのため結婚式の親族が1つ紋の色留袖を着用していた場合は、ゲスっとは訪問着を着るのがマナーです。
3.着用者の既婚・未婚の違い
- 色留袖:誰でも好きなときに着られる着物
- 黒留袖:既婚女性が着る最高峰の着物
そのため未婚の女性は黒留袖を着ることはできません。
結婚式などで新郎新婦の両親や祖母が着ている印象がありますよね。
黒留袖のマナーになりますので、未婚の女性が着用しないようにしてくださいね。
正式な留袖は黒になりますが、近頃慶事ごとは明るい雰囲気でと考えられる方も多くなり、色留袖を選ばれる方も増えています。
お招きする側も、明るい色合いの着物のほうがお祝いの雰囲気があっていいと考えられる人もいます。
ただし、なかには厳しいしきたり等がある、上司関係のお祝いの席などは事前に確認しておいたほうが安心です。
色留袖ならではの女性らしさや、帯や小物によって変わる遊び心もありますね。
着こなせる幅も広いのでちょっとしたお祝い事にも着られます。
結婚式にお呼ばれしたときに、色留袖を着ていかれる人も増えています。
なかには淡い色味だと花嫁さんとかぶってしまいそうで心配…なんて声も聞きますが、生地が全く違うので色味をそこまで心配することはありません。
実際に白く見えがちな淡いピンクの色留袖も人気があり、選ぶ人の多い色として知られています。
黒留袖と色留袖を選ぶポイント
黒留袖と色留袖にも、どんな柄にするのかによって印象が全く違います。
年齢に合わせた柄を選ぶことで、より着物を素敵に着こなすことができます。
例えば若い世代の女性は、留袖でも高い位置にまで柄が描かれた華やかなデザインのものがおすすめです。
お祝いの席ですし、きちんと感を残しつつ華やかなデザインを選んでおけば、お祝いの席を盛り上げることにも繋がります。年配の女性の場合、裾の模様は少なめの控えめなデザインを選ぶのをおすすめします。
全体のバランスも良くなりますし、すっきりと見えるので落ち着いた印象を演出できます。
黒留袖も色留袖も柄の部分に視線が集まりやすいので、どんな柄にするのかはとても重要なポイントになります。
着る人の気持をモチーフに込められるのも着物ならではの、着こなし方の一つではないかなと思います。
「おめでとう」の気持ちを柄や色を通して伝えられたら素敵だと思いませんか。
選ぶときに、「この柄にはどんな意味が含まれているのだろう?」と考えてみるのも面白いかもしれません。
また柄には流行もありますので、あまりに古い色留袖だと柄の雰囲気が合わなかった…なんてこともあります。
今、どんな色留袖が流行っているのか確認しておくこと、小物でもいいので流行を取り入れられたらいいですね。
留袖と訪問着との違い
黒留袖と色留袖の違いの他に、留袖と訪問着の違いがわかりにくいと感じている人もいるのではないでしょうか。
- 黒留袖・色留袖:正礼装
- 訪問着:準礼装・略礼装
まず、訪問着は、華やかに装いたいときの「準礼装」にあたります。
訪問着を着用できるシーンはとても広く、子供のお宮参りや七五三、入学式、卒業式などの場面で着られています。
留袖は、シンプルの着物ですが、裾の部分に華やかな絵羽模様が描かれている特徴があり、華やかな席に最適です。
留袖も訪問着もどちらも柄付けに切れ目がないもので、絵羽模様が一枚に繋がっているというが共通の特徴。
柄の位置に違いがあり、胸などの上半身の部分にも柄が入っているのが訪問着になりますので、柄の位置を見て判断することもできます。
また、描かれている柄も、有職文様などの格式高くおめでたい要素があるものが多く、柄を見ても華やかなものがメインになります。
訪問着は柄に統一性があるわけではなく、バラエティ豊富な種類展開も特徴のひとつです。
モダンなデザインや古典調のもの、いまどきの流行デザインなども含めある程度好きな柄のなかから選ぶことができます。
礼装としてお祝いの式で着るなら、訪問着よりも色留袖のほうが格上になります。
色留袖も訪問着もお祝いの席で着るため、袋帯を使って華やかに仕上げます。
まとめ
色留袖や黒留袖の違いや使いこなし方についても説明しました。
お祝いの席に招く側なのか招かれる側なのかによっても違いますし、どんなお祝いの席なのかによって違いがあります。
色はもちろん柄の入り方なども含め、納得できる留袖を探してみてくださいね。
着る人の年代によっても違いますし、袋帯との相性も含めて検討してください。
特別な日に花を添えられるような留袖を選んでくださいね